レシピ検索サイトなどで頻繁に見られる「しらすが無いときはちりめんじゃこで代用可能」という記述には、料理科学的な落とし穴が存在します。両者はイワシ類の稚魚を原料とする点では共通していますが、製造工程における水分含有率と塩分濃度が根本的に異なります。
釜揚げしらすの水分量が約80%であるのに対し、しっかりと天日干しや機械乾燥されたちりめんじゃこの水分量は約35〜50%まで低下しています。つまり、同じ重量で換算すると、ちりめんじゃこはしらすの倍近い塩分濃度と硬さを持っています。下処理なしでそのまま酢の物に投入すると、合わせ酢の水分を過剰に吸ってふやける一方で、噛んだ際に強い塩辛さが口の中に広がり、全体のバランスを完全に崩してしまいます。
ちりめんじゃこを用いて絶品の酢の物に仕上げる裏技は、「フライパンによる事前の乾煎り」です。油を引かずに弱火で1〜2分乾煎りし、香ばしさを引き出してから熱いうちに合わせ酢へくぐらせることで、酢の酸味で適度に身が柔らかくなり、香ばしい風味ときゅうりのみずみずしさが完璧なコントラストを描きます。ネット上の代用情報を鵜呑みにせず、食材の脱水レベルに応じたひと手間を加えることが、失敗を回避するプロの思考法です。