伊勢海老を刺身で極上の味わいに仕上げるためには、背ワタの完全な除去と締めの温度管理が味覚の分水嶺となります。背ワタ(腸管)には砂や消化物が残っており、これが残存すると口に入れた瞬間のジャリジャリ感や生臭さの原因になってしまいます。
胴体から身を剥がし終えたら、背側の中央を通る黒い筋を確認してください。身の表面に浅くハサミで切れ目を入れ、指先や竹串の先端を使ってそっとつまみ、途中でちぎれないよう水平に引き抜きます。もし途中で切れてしまった場合は、ためらわずに包丁やハサミで背を開き、流水で優しく洗い流してください。
背ワタを取り除いた身は一口大の削ぎ切りにし、仕上げに氷水へサッと潜らせます。ここで注意すべきは浸水時間です。冷水にさらす時間はわずか30秒から1分程度が鉄則。長時間水に浸けてしまうと、グリシンやアルギニンといった貴重な遊離アミノ酸(旨味・甘味成分)が流出して水っぽい食感に劣化してしまいます。表面がキュッと縮んで「花が咲いたような」白濁のグラデーションが出た瞬間に引き上げ、キッチンペーパーで徹底的に水分を吸い取ることがプロの仕上がりを再現するコツです。