茨城県水戸市加倉井町に位置した水戸ドライブインひたちの里が営業を終了した背景には、単一の理由にとどまらない、複数の複合的な環境変化が存在していました。関係者への聞き取りや当時の交通動態データから浮かび上がる決定打は、「団体旅行依存型ビジネスモデルの崩壊」と「広域高速道路網の再編」です。
同施設は、春の偕楽園「梅まつり」、国営ひたち海浜公園のネモフィラやコキア、大洗・那珂湊の海鮮市場などを巡るひたちの里 観光バスツアーの主要中継拠点として栄華を極めました。1階には茨城県内屈指の規模を誇る物販フロア、上階には数百人規模の団体客を一度に収容できる大食堂が備えられ、昼時には何十台もの大型観光バスが滑り込んでいました。しかし、2020年春からのパンデミックによって観光バスの運行本数は前年比90%以上の急激な減少を記録。団体客受け入れを前提に設計された大規模インフラは、突如として維持管理費が重くのしかかる固定費の塊へと反転しました。
さらに見逃せないのが、インフラ環境の長期的な変化です。北関東自動車道の延伸・全通によって、北関東各県や東北方面からの観光客が水戸ICを降りることなく目的地へ直行できるようになり、水戸IC 国道50号バイパスを利用する必然性が徐々に薄れていました。老朽化した巨大建物の耐震・改修維持コストを抱えながら、劇変したツーリズム需要に耐え続けることは困難を極め、運営企業は苦渋の決断として完全閉鎖を選択せざるを得なかったのが水戸ドライブインひたちの里 閉店理由の根本的な真相です。