病棟に勤務する准看護師の手記や取材証言を追うと、現場特有の複雑な心理的力学が浮かび上がってきます。
「自分より10歳以上若い新卒の正看護師に業務の指導をし、現場の急変対応もこなしているのに、ボーナスの明細を見るたびにやりきれない思いになる」
こうした声は、急性期や一般病棟に勤務する准看護師の間で日常的に吐露されています。書類上、看護計画の最終責任者になれないことや、役職(師長や主任)への昇進ルートが閉ざされている点は、現場でのキャリアの壁として立ちはだかります。一方で、町医者と呼ばれる無床クリニックや皮膚科、耳鼻科、あるいはデイサービスなどの介護現場からは全く異なる実態が聞こえてきます。「院長からすれば、点滴と処置を手際よくこなしてくれるなら准看で全く問題ない」「夜勤のないクリニックなら正看と時給換算で100円〜200円程度しか変わらず、家庭と両立しやすい」という、高い費用対効果を評価する意見も根強く存在します。
近年、キャリアアップを目指す准看護師にとって強力な追い風となっているのが、准看護師から正看護師を目指す通信制(進学コース)の要件緩和です。従来、通信制の看護師学校養成所に入学するためには「准看護師としての実務経験が10年以上」必要とされていましたが、法改正により「実務経験7年以上」へと短縮されました。准看護師として現場で働きながら給料を得て、7年のキャリアを積んだ段階で2年間の通信教育を受け、国家試験を突破して正看護師へステップアップする女性や男性が急増しています。