公共放送であるNHKの『みんなのうた』は、長年にわたり日本の子供たちの情操教育を支えてきた。しかし、『月のワルツ』の登場は放送業界にとっても大きな転換点となった。分かりやすさや明るさだけが子供番組の解ではない――そう言わんばかりの本格的な表現力は、視聴者の年齢層を大人にまで一気に拡大させることになった。
幼少期にリアルタイムで接した世代が成長し、改めてその芸術的価値を再評価する。こうしたサイクルが生まれた背景には、安易な歩み寄りを排し、極上のクオリティを追求した制作陣の妥協なき姿勢がある。NHK Eテレという開かれたプラットフォームでこのような尖った挑戦がなされたこと自体、テレビ史における貴重な財産と言える。