バーのカウンターにおいて、ブルームーンほどドラマチックな誤解を生みやすい一杯はありません。一般に広く認知されているブルームーンのカクテル言葉は「できない相談」、そしてそこから派生した「お断り」のメッセージです。意中の相手から口説かれた際、言葉の代わりにこのカクテルを注文して突き返す、といった都市伝説めいたバーの作法を聞いたことがある方も多いでしょう。
しかし、カクテル言葉の辞典をさらにめくると、驚くべきことに「完全な愛」という全く逆の意味も堂々と記載されています。拒絶と純愛。白と黒ほどに異なるメッセージが同居している事実は、多くのバー愛好家やビギナーを惑わせてきました。
この二重の意味を知らずにデートで注文し、後から意味を調べて冷や汗をかいたというエピソードは今も後を絶ちません。しかし、この両義性こそがブルームーンというカクテルを単なるアルコール飲料から、物語を秘めた特別な存在へと押し上げている要因でもあります。