さつまいもを加熱した際に生まれる濃厚な甘みの正体は、芋に含まれるデンプンが分解されて生成される「麦芽糖(マルトース)」です。この化学反応を担うのがβ-アミラーゼという糖化酵素であり、この酵素が最も活発に働く温度帯は65℃〜75℃とされています。
一般的な電子レンジ加熱では、急激に100℃近くまで温度が上昇するため、β-アミラーゼが十分に働く間もなく失活してしまい、甘みが引き出せません。一方、さつまいもを圧力鍋でねっとり甘くする方法の根幹は、密閉空間での緩やかな熱伝導と、火を止めた後の「自然放置(余熱減圧)」にあります。
加圧によって中心部まで一気に熱を行き渡らせた後、圧力が下がるまでの約15〜20分間の緩やかな冷却プロセスこそが、まさに糖化酵素がフル稼働する黄金タイムです。急いでピンを倒して圧力を抜く(急減圧する)のではなく、自然にピンが落ちるまでじっくり待つことこそが、専門店のような濃密な甘みを生み出す決定打となります。