裏社会のパワーバランスを語る上で欠かせないのが、指定暴力団(ヤクザ)と半グレの構造的相違です。かつて裏社会を牛耳っていた暴力団は、明確なピラミッド型の上下関係(盃事による擬似血縁関係)と「組事務所」という固定拠点を持ち、警察庁の指定を受けることで厳しい法的規制(暴対法・暴排条例)の対象となってきました。銀行口座の開設拒絶や不動産契約の不可など、締め付けが厳格化した結果、暴力団構成員数は年々激減しています。
その間隙を縫って肥大化したのが「半グレ」です。彼らは盃などの儀式を持たず、リーダーとメンバーの関係も流動的で、固定の事務所を構えません。警察庁は2013年にこれらを「準暴力団」と位置づけ、実質的な組織犯罪集団として情報収集と摘発を進めてきました。しかし近年、その生態系はさらに先鋭化し、SNSや秘匿性の高い通信アプリ(テレグラムやシグナル)を介して犯罪ごとにメンバーを募る「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」へと形態をシフトさせています。
警察庁が公表した治安統計資料を見ても、伝統的ヤクザの構成員・準構成員数が2万人を割り込む水準まで衰退した一方、トクリュウが主導する強盗・特殊詐欺・オンライン犯罪の被害総額は高止まりを続けています。看板を出さず、仁義や掟に縛られない冷酷な合理主義こそが、現在の半グレ・トクリュウの最大の特徴です。