マツモトクラブのコントが単なるお笑いにとどまらず、短編映画や上質な演劇を観たような余韻を残す理由は、その特異なキャリアにあります。
彼はもともと、西田敏行や竹中直人などを輩出した名門「劇団青年座」の研究所(第27期生)を卒業し、本格的な舞台俳優としてキャリアをスタートさせました。約10年間にわたり劇団やプロデュース公演の舞台に立ち、徹底した演技の基礎、発声、身体表現、脚本の読解力を叩き込まれたのです。
しかし、30代半ばを迎える頃、自らが描く表現をよりダイレクトに観客へ届けるため、お笑いの道へ転身を決意します。俳優からお笑い芸人への転身は決して平坦な道ではありませんでしたが、劇団時代に培った圧倒的な演技力と構成力は、唯一無二の武器となりました。
自室で録音した音源と舞台上で会話を繰り広げる「一人芝居型音源コント」は、俳優としてのバックボーンがあったからこそ生まれた発明です。小劇場仕込みのリアルな心情描写と、日常の些細な瞬間を切り取る卓越したセンスが融合し、お笑い界に新たな風を吹き込みました。