SNSの料理投稿やレシピ相談サイトを分析すると、バレンタインシーズンや週末の手作りスイーツにおいて「ココアケーキがパサパサになって膨らまなかった」「焼き上がりが泥炭のように苦く、固くて食べられない」という悲鳴が定期的にトレンド入りします。都内の製菓専門学校で教鞭を執るパティシエは、講義中の実習現場を次のように証言しています。
「生徒たちに『ココアパウダー大さじ2』を計量器を使わずに目分量で取らせると、ほぼ全員が適正重量をオーバーします。スプーンですくった際に表面を平らに削る『すりきり』を怠り、こんもりと盛り上がった状態でボウルに投入してしまうのです。純ココアの場合、すりきり2杯なら12gであるべきところ、山盛り2杯で20g近く入ってしまうケースが後を絶ちません」
ココアパウダーはお菓子作りにおいて「粉類(小麦粉)」の一部として機能しますが、小麦粉よりもはるかに強い吸水性と脱水作用を持っています。レシピ指定の分量を超過して投入されたココアは、生地内の水分と油分を猛烈な勢いで吸い上げ、グルテンの形成や気泡の熱膨張を物理的に阻害します。その結果、シフォンケーキは腰折れを起こし、クッキーは口の中の水分を奪う粘土のような食感へと変貌してしまうのです。お菓子作りココア分量失敗しないコツの第一歩は、「ココアは調味料ではなく、極めて吸水性の高いデリケートな粉体である」と認識を改めることにあります。