インターネット上の簡易的なまとめ記事では「5枚葉ならコシアブラ、それ以外は偽物」という単純化された言説が散見されます。しかし、この機械的なルールのみを過信することは、山菜採りにおける重大な盲点を生み出します。
第一の誤解は、「若木や日陰の個体では小葉の数が不安定になる場合がある」という植物学的な事実です。樹勢の弱い幼木や過度のストレスを受けた枝先では、本来5枚展開するはずの掌状複葉が4枚や稀に3枚の状態で不完全に展開することがあります。これを「3枚だからタカノツメだ」と早合点したり、逆に「5枚ではないからウルシかもしれない」とパニックに陥ったりするケースがあります。重要なのは小葉の枚数だけでなく、葉が「1点から放射状に出ているか(掌状)」という根本的な葉序(葉の付き方)を確認することです。ヤマウルシは小葉が軸の両側に段違い、または対になって並ぶため、放射状に広がることは絶対にありません。
第二の誤解は、「芽が赤みを帯びているものはウルシだから採るな」という俗説です。確かにヤマウルシの若芽や葉軸は鮮やかな赤褐色を呈することが多いですが、コシアブラの新芽も、冷え込みの厳しい高山帯や強い紫外線に晒された場合、アントシアニン色素の沈着によって外側の苞葉や軸が赤紫に染まることが頻繁にあります。「赤いからすべてウルシ」「緑だから安全」という色調のみによる二元論的な選別は極めて危険であり、必ず形状と毛の有無をセットで確認する山菜採りの誤食防止における基本注意点を徹底しなければなりません。