しこりニキビの正式名称は、皮膚科学において「硬結(こうけつ)ニキビ」、さらに炎症が進んで膿や血液が混ざり合って袋状になったものは「嚢腫(のうしゅ)」と呼ばれます。一般的なニキビは表皮に近い毛穴の出口付近でアクネ菌が増殖して起こりますが、硬結ニキビは毛穴の壁(毛包壁)が破裂し、アクネ菌や皮脂、角質が周囲の真皮層へ漏れ出すことで引き起こされる重度の異物反応です。
真皮層には無数の知覚神経や毛細血管が走っています。そのため、漏れ出た内容物に対して激しい免疫反応が起きると、周囲の組織が強く腫れ上がり、指で触れるだけで激痛を伴う「硬いしこり」として知覚されます。これが、表面に白い芯が見当たらないのに、皮膚の奥底でズキズキと痛むメカニズムです。
特に顎のしこりニキビが痛い原因には、解剖学的な特徴と生活習慣が密接に絡み合っています。顎やフェイスラインは皮脂腺の構造が皮膚の深部に位置しているうえ、男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を受けやすい受容体が集中しています。精神的ストレスや睡眠不足、自律神経の乱れによってホルモンバランスが崩れると、角化異常が生じて毛穴が急速に閉塞します。さらに、マスクの擦れや「無意識に頬杖をつく」「顎を触る」といった物理的な接触刺激が加わることで、微細な炎症が一気に真皮深層へと波及してしまうのです。