本家尾張屋 本店を訪れた人の多くが注文するのが、室町時代から伝わる看板メニュー「宝来そば」です。かつて金箔打ち職人が飛び散った金粉を集めるために蕎麦団子を用いた故事から、「宝が寄り来る縁起物」として名付けられた伝統の一品。重箱のような丸い朱塗りの漆器が五段に重ねられ、目にも鮮やかな8種類の薬味とともに運ばれてきます。
薬味には、風味豊かな海苔、すりごま、香り高いわさび、青ねぎ、錦糸卵、紅葉おろしに加え、京都らしい甘辛く煮含めた椎茸、香ばしい素揚げの海老天などが並びます。宝来そばの食べ方には決まった厳格なルールはありませんが、一段ごとに異なる薬味を自由に組み合わせ、上から少しずつ特製のつゆを回しかけていただくのが通のスタイルです。
一段目はシンプルに葱と山葵で蕎麦本来の風味とつゆの出汁感を味わい、二段目は錦糸卵と海苔で華やかに、三段目は椎茸と紅葉おろしでコクと辛味のコントラストを楽しむなど、食べ進めるごとに表情を変える贅沢な設計。最後は残った薬味とつゆに熱々の蕎麦湯を注ぎ、余韻をじっくりと堪能するのが至福の締めくくりです。