食肉流通の現場において、牛ミスジ部位は牛の前脚上部、いわゆる「ウデ肉(肩肉)」の一部に分類されます。具体的には、前脚を動かす土台となる牛肩甲骨肉の裏側、骨に張り付くように位置している筋肉(棘下筋=きょくかきん)を指します。
牛のウデや肩周辺は歩行や体重を支えるために日常的によく動かすため、一般的には筋肉質で繊維が太く、筋膜が多く発達して硬くなりやすい傾向があります。ところが、肩甲骨の内側に潜り込んでいる牛ウデ肉ミスジだけは例外的に運動量が少なく、非常に繊細で細やかな肉質が保たれています。
成牛1頭の体重はおよそ700〜800kg、骨や内臓を除いた枝肉ベースでも400〜500kgほどになりますが、そこから採取できるミスジの量は左右合わせてわずか2〜3kg程度に過ぎません。全体の0.5%前後に満たない歩留まりの低さから、食肉卸の間でも長年「幻の希少部位」として扱われてきました。
なお、「ミスジ(三筋)」という名称は、1つの筋肉の塊の中に3本の筋(中心を走る太い筋と、それを取り囲む2枚の薄い筋膜)が通っている構造に由来しています。精肉された断面を見ると、木の葉のような形状の中にスッと1本の白い筋が通り、その周囲に美しい霜降りが羽のように広がっているため、一目でミスジと判別できる視覚的特徴を持っています。