ネット上のQ&Aサイトや一部のまとめ記事では、「『お履き違え』と接頭辞の『お』を付ければ目上にも使える敬語になる」といった誤った解説が散見されます。しかし、これは明確な誤謬です。
敬語の文法上、「お(ご)〜になる」「お(ご)〜なさる」は尊敬表現の基本形ですが、元の動詞が相手への非難や侮蔑を含む場合、尊敬語を付与しても失礼な性質は消えません。例えば、「盗む」を「お盗みになる」、「嘘をつく」を「お嘘をおつきになる」と言っても敬意が成立しないのと同様の構造です。
また、「自身の失敗をへりくだって言うなら『履き違えておりました』は使えるのか」という点も疑問を持たれがちですが、これも避けるのが無難です。自分の行動に対して使うと、「私は道理をわきまえない人間でした」と自己の道徳的欠如を過剰に卑下することになり、ビジネスパーソンとしての信頼感を損ねてしまいます。自身のミスを認める場面でも、「私の勉強不足で誤解しておりました」「解釈を誤っておりました」と表現するのがスマートな大人のマナーです。