桐谷氏の資産推移は、日本経済の荒波をそのまま映し出した縮図といえます。2006年のライブドア・ショック前には、信用取引を積極的に活用し、総資産は約3億円にまで膨らんでいました。しかし、2007年のサブプライム危機、そして2008年9月のリーマンショックが直撃します。
連日のストップ安で持ち株は投げ売ることもできず、信用取引の維持率を保つために連日追加証拠金(追証)の差し入れを迫られました。後年のインタビューで桐谷氏自身が「当時は寝ることもできず、毎朝口座の残高が消えていくのを見て本気で死を覚悟した」と述懐している通り、3億円あった資産はわずか数千万円(評価額ベースで約5,000万円)にまで激減。精神的にも経済的にも極限のどん底を味わうことになります。
この壊滅的な挫折を機に、桐谷氏は投資手法を180度転換しました。借金(信用取引)を一切やめ、現物株の長期保有、そして配当金と「株主優待」にフォーカスした守りの運用への舵切りです。保有株から届く食料品や日用品で食いつなぎながら、優待利回りと配当利回りの高い銘柄をコツコツと単元(100株)単位で買い増す戦略を徹底しました。
2013年以降のアベノミクス相場で相場全体が押し上げられる中、桐谷氏が地道に買い集めていた優待株の価値は跳ね上がりました。そして2020年代、日経平均株価がバブル期の最高値を塗り替える歴史的相場の中で、桐谷氏の資産は一気に7億円の大台を突破。2024年秋に放送された『月曜から夜ふかし』でも、75歳を迎えた本人の口から「資産も銘柄数もとにかく過去最高を更新している」と晴れやかに語られました。