本作のストーリーテリングにおいて、ダンとハルカの関係は単なる恋愛描写の枠に収まらないダイナミズムを持っています。物語序盤におけるハルカは、圧倒的なスピードとセンスを持つダンを「研究対象」あるいは「自らの目的を果たすための駒」としてスカウトし、持ち前のフェロモンで翻弄する優位な立場に立っていました。
象徴的なのが、研究室や移動車内などで繰り広げられる過激なスキンシップの数々です。ダンの動揺を楽しみながら主導権を握るシーンは、今なおハルカ・グレイシアの名シーンとして語り草になっています。しかし、ダンがビッグフットバスケ(BFB)を通じて既成概念を次々と破壊していくにつれ、両者のパワーバランスは変化を見せ始めます。
月と地球という階層社会の壁に縛られていたハルカ自身が、ダンの予測不可能な情熱に突き動かされ、自らの意志でレールを外れていく過程は見事なドラマでした。単に男を誘惑するファム・ファタールではなく、ダンの最大の理解者であり、共に限界を超えるパートナーへと成長していく軌跡が、作品後半の熱狂を生み出す大きな原動力となったのです。