近代以降の吹奏楽作品やコンクール自由曲では、上のFを超えてハイG、ハイAといったクラリネット最高音フラジオ運指(アルティッシモ音域)が頻繁に要求されます。この音域では、トーンホールを完全に塞ぐのではなく、左手人差し指のキーをわずかにずらして「ハーフホール」状態を作る、あるいは右手のサイドキーを複数組み合わせて特定の高次倍音のみを共振させる特殊な指使いが不可欠です。
フラジオ音域を攻略する際は、「指の形を力んで押し付けない」ことが絶対条件です。キーを強く叩きつけるように押さえると管体に余計なねじれが生じ、繊細なパッドの密閉バランスが崩れて発音限界(音が出るスイートスポット)が極端に狭くなります。
一方、低音パートを支えるバスクラリネット運指表を扱う際には、B♭クラリネットとの構造的な相違点に注意を払わなければなりません。現代のバスクラリネットの多くは、スロート部と管体上部に独立した2つのレジスターホールを備える「ダブルレジスターキー機構」を採用しています。指の配置自体はB♭クラリネットとほぼ共通であるものの、以下の点に明確な違いが存在します。
- 最低音の拡張(ショート管とロング管):一般的なLow E♭メカニズムに加え、プロ仕様のLow Cモデルでは右親指や右手小指で操作する拡張キーが追加される。
- 高音域の倍音反応:管体が太く長いため、B♭クラリネットと同じフラジオ運指を使うとピッチがぶら下がりやすい。バスクラリネット専用の補正運指(右手のトーンホールを1つ多く開けるなど)を選択する必要がある。