どれほど高価な医薬品を購入しても、数週間後に「やはり良くならない」と歯科医院へ駆け込む患者は後を絶ちません。なぜ市販薬を塗っても飲んでも、歯肉炎が根本から治らないのでしょうか。そこには口腔内環境特有の構造的な壁が存在します。
歯肉炎 治らない 理由の核心は、「バイオフィルム」と「歯石」の存在にあります。歯周病菌は、自らを守るために強固なバリアであるバイオフィルム(細菌の集合体)を形成します。これは台所の排水口に生じるヌメリと同じ性質を持ち、薬剤を上から散布したり内服薬を飲んだりしても、バリアの内部まで有効成分が十分に浸透しません。さらに、唾液中のカルシウムと結びついて石灰化した「歯石」は表面が軽石のようにザラザラしており、新たな細菌の格好の温床となります。この歯石は、ブラッシングやうがい薬、市販の塗り薬では1ミリたりとも削り落とすことができません。
もう一つの重大な盲点が、抗炎症成分による「マスキング効果」です。トラネキサム酸やグリチルリチン酸によって歯ぐきの毛細血管収縮や消炎が起こると、出血や腫れといった「自覚症状」は一時的に消え去ります。しかし、歯周ポケット内部では細菌が活動を続けており、骨の破壊が水面下で静かに進行しているケースが多々あります。痛みが引いたことで完治したと自己判断し、受診を先延ばしにしてしまう心理的トラップこそが、歯肉炎から重度の歯周炎へと転落させる最大の引き金となっているのです。