物語の主人公である小林さやか氏が実際に通っていたのは、愛知県名古屋市にキャンパスを構える金城学院中学校・高等学校である。地元では「椙山女学園」「愛知淑徳」と並び「SSK」と称される、中部地方屈指の伝統あるお嬢様学校だ。完全中高一貫教育を敷き、裕福な家庭の子女が多く通うことでも知られている。
この事実を知った一部の人々からは、「もともと名門私立中学に入学できるだけの学力があったのではないか」という冷ややかな見方が提示されることも少なくない。確かに中学受験を突破した経験は無視できない要素だ。しかし、実情はそう単純ではなかった。金城学院高校は内部進学でエスカレーター式に大学へ進める環境が整っているため、一度学習意欲を失った生徒はとことん勉強から離れてしまう構造的な側面も孕んでいた。
当時の小林氏はまさにその典型例だった。中学入学後に素行が乱れ、勉強を完全に放棄。高校に進学する頃には、校内での成績順位が文字通りの学年最下位、全国模試での偏差値は30近くまで落ち込んでいた。「聖徳太子」を「せいとくたいこ」と読み、東西南北の概念すらあやふやだったというエピソードは、決して演出上の誇張ではなく生々しい現実だったのである。