本作で監督を務めた八鍬新之介は、制作準備段階において膨大な歴史資料と黒柳本人への綿密な取材を重ねた。今回初めて明かされた制作秘話によれば、キャラクターの水彩画風の柔らかな質感を表現するため、デジタル全盛の時代にあえて膨大な枚数の作画を職人的な手描き作業に頼ったという。
「トットちゃんの目に映る世界は、大人に見える世界よりもはるかに鮮やかで、光に満ちていたはずだ」と八鍬監督は語る。劇中で描かれる光の粒や水滴、そして登場人物たちの繊細な表情の変化は、まさに劇場アニメの極致と言える仕上がりだ。劇伴音楽を担当した一流の演奏家たちによるアコースティックな響きも相まって、視覚と聴覚の両面から観客を戦前の豊かな自然と温かな生活の中へと引き込んでいく。