還元水飴を使用したのど飴や糖質オフスナックのパッケージには、必ずと言っていいほど「一度に多量に召し上がると、体質や体調によりお腹がゆるくなることがあります」という注意書きが添えられています。実際にSNSや掲示板を調査すると、「ゼロシュガーのお菓子を食べすぎたら急激な腹痛に襲われた」「下痢が止まらなくなった」という生々しい体験談が多数投稿されています。
この現象こそが「還元水飴は体に悪い」と錯覚される最大の引き金となっていますが、これはアレルギーや中毒反応ではなく、純粋に身体の物理的・浸透圧的な生理メカニズムによるものです。消化器内科の観点から、その決定的な理由は2つの段階で説明されます。
第1の理由は「浸透圧性下痢」です。還元水飴の主成分である糖アルコールは、人間の小腸にある消化酵素では容易に分解されず、吸収されにくい構造をしています。吸収されなかった高濃度の糖アルコールは、そのまま水分を抱え込んだ状態で大腸へと流れていきます。すると大腸の内部は浸透圧が急激に上昇し、腸壁から水分を引き寄せて便を水様化させてしまうのです。便秘治療に使われる酸化マグネシウム下剤と同じ原理が、体内で自然に発生していると言えます。
第2の理由は「大腸内細菌による急速な発酵」です。小腸をスルーして大腸に到達した糖アルコールは、大腸に棲む無数の腸内細菌にとって格好の餌となります。細菌たちがこれらを急速に代謝・発酵させる過程で、メタンガスや水素ガス、炭酸ガスが短時間で大量に発生します。「お腹が張って苦しい」「ゴロゴロと異音が鳴る」「オナラが止まらない」という症状は、まさにこのガス発生によるものです。
成人における一過性の緩下作用(下痢を起こす)限界量は、体重1kgあたりおよそ0.3〜0.5g程度とされています。体重60kgの人であれば約18〜30gを一気に摂取すると症状が現れやすくなります。市販のキャンディ数粒程度で過度な心配をする必要はありませんが、糖質オフの焼き菓子やプロテインバーを「太らないから」と一度に数袋まとめ食いした場合には、確実に腸への負荷がかかります。