生徒や保護者から見えないブラックボックスと称されるのが、毎年9月上旬から中旬にかけて各高校で開かれる「推薦選考委員会」です。指定校推薦校内選考の基準は学校ごとの内規によって厳密に定められていますが、基本構造はどの高校でも類似しています。
都内中堅私立高校で20年以上にわたり進路指導部主事を務めるベテラン教諭は、取材に対して選考会議の緊迫した実情を次のように明かしました。
「会議室のプロジェクターには、希望者の評定平均、3年間の出欠記録、模試偏差値、取得資格が一覧化されて投影されます。例えば早稲田大学法学部の1枠に対して、評定4.7の生徒Aと評定4.6の生徒Bが競合したとします。通常は評定が高い生徒Aが選ばれますが、もし生徒Aの欠席日数が12日で、生徒Bが無遅刻無欠席、かつ英検準1級を持っていた場合、議論は紛糾します。大学側は『高校生活全般において誠実であり、中退リスクのない生徒』を求めているからです」(進路指導担当教諭)
特に注視すべきは「指定校推薦出願条件と欠席日数」の関係性です。多くの大学が「全体の学習成績の状況4.0以上、かつ全体の欠席日数が10日以内(または15日以内)」といった出欠条項を要件に盛り込んでいます。高校側にとっても、指定校推薦枠で送り出した生徒が大学で留年や退学に至った場合、翌年度以降の推薦枠が削減・剥奪されるペナルティリスクを背負うため、健康面や生活習慣に不安のある生徒を推薦することには極めて慎重にならざるを得ません。
同点・僅差の競合が発生した際、合否を決定づける判定要素は以下の優先順位で処理されるのが現場のスタンダードです。
① 評定平均(全体の学習成績の状況)の絶対値
小数点第2位まで厳密に比較。0.01の差であっても原則として高位の生徒が優先されます。
② 大学・学部が指定する特定教科の評定
外国語学部であれば英語、理工学部であれば数学・理科の数値を抽出して再計算します。
③ 欠席・遅刻・早退の回数
3年間を通じた皆勤・精勤は強力なアドバンテージとなり、逆に病気療養などの正当な理由がない二桁欠席は致命的な減点材料となります。
④ 外部検定試験のスコア(実用英語技能検定、GTECなど)
英検準1級や2級は、評定が拮抗した際の最大の逆転要因として機能します。
⑤ 生徒会活動、部活動の実績、校外コンテスト等の受賞歴
全国大会出場や部長職の経験などは、最後の最後で当落を分ける補足評価として加味されます。