江戸時代の寿命30歳説は本当か?成人後の余命と驚きの死因ランキング

江戸時代の寿命30歳説は本当か?成人後の余命と驚きの死因ランキング

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「江戸時代の寿命は30〜40歳」という言説は、統計学的には誤りではないものの、実態の表現としては重大な誤解を含んでいます。ここで語られる「平均寿命」とは、学術的には「0歳時点における平均余命」を指します。つまり、生まれたばかりの赤ん坊が平均してあと何年生きられるかという期待値です。

江戸時代においてこの数値を劇的に押し下げていた最大の要因こそが、乳幼児死亡率の影響でした。歴史人口学者の速水融氏や鬼頭宏氏らの研究調査によると、当時は衛生環境の脆弱さや栄養状態、感染症への無防備さから、生まれた赤ん坊の20〜25%が1歳未満で死亡し、5歳までに約30〜40%が命を落としていたと推計されています。昔から日本に伝わる「七つまでは神の内」という言葉は、7歳を迎えるまではいつ神仏の世界へ還ってしまっても不思議ではないという、親たちの痛切な諦念と祈りが込められた防衛心理の表れでした。

では、過酷な幼少期を乗り越えて江戸時代何歳まで生きたかといえば、現実は想像以上にタフでした。各地の宗門改帳を復元したデータによると、無事に15歳の元服を迎えることができた人物の平均余命はおよそ40〜45年、すなわち55歳から60歳前後まで生きるのがごく一般的な姿だったのです。さらに50歳まで生き抜いた町人や農民であれば、65〜70歳近くまで達することも珍しくありませんでした。

人生儀礼としての還暦の歴史と平均余命を紐解くと、60歳を迎える「還暦」が盛大に祝われた理由がよくわかります。還暦とは、生まれ年の干支(十干十二支)が一巡して元の暦に還ることを意味しますが、過酷な感染症や飢饉をすべてくぐり抜け、60歳まで生き延びること自体が、地域コミュニティにおいて稀有で尊い「強運と生命力の証」だったのです。

中島 亮太
著者

中島 亮太

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。