スクリーンの中で放たれる、あの一瞬の静寂。田中邦衛という役者が持っていた最大の武器は、シリアスとコメディの境目をあざやかに消し去る天性のリアリティだった。『北の国から』で見せた不器用だが温かい父親像の一方で、東映映画におけるヤクザ役や悪役で見せた狂気と哀愁。その幅広い振れ幅こそが、黄猿というキャラクターの「掴みどころのなさ」にそのまま息づいている。
光の速度で移動し、圧倒的な破壊力を持ちながら、どこか飄々としていて本心を見せない。黄猿のそのアンビバレントな魅力は、田中邦衛が長年の演技生活で築き上げた「人間臭さと怪しさの同居」なしには生まれ得なかった。