街宣車と聞いて誰もが真っ先に思い浮かべるのが、「漆黒のボディ」と「耳を劈くような大音量の軍歌」です。これらは単なる威嚇目的だけでなく、右翼思想の歴史的文脈や心理的効果が綿密に計算された結果でもあります。
まず、車体が黒く塗装されている背景には複数の理由が存在します。最大の理由は「国家や英霊に対する服喪」を象徴しているという点です。敗戦によって失われた日本の伝統や領土、戦没者に対する哀悼の意を表すため、喪服と同じ黒を基調としていると団体関係者は主張します。同時に、高級官公庁車や要人警護車両(VIPカー)が黒塗りであるのと同様に、威厳や厳粛さを漂わせる視覚的効果を狙っている側面も見逃せません。
一方、スピーカーから流れる楽曲には明確な定番が存在します。街頭で頻繁に使用される代表的な軍歌・行進曲は以下の通りです。
- 『軍艦行進曲(軍艦マーチ)』:旧日本海軍の公式行進曲であり、認知度と迫力が極めて高い定番曲。
- 『同期の桜』:特攻隊員や戦没者への鎮魂歌として多用される楽曲。
- 『抜刀隊(陸軍分列行進曲)』:警視庁音楽隊の行進などでも使われる伝統的な軍歌。
- 『歩兵の本領』:大日本帝国陸軍の代表的軍歌で、リズミカルなテンポが特徴。
これらの楽曲を大音量で流す目的は、自らの主張へ耳目を集めるアテンション効果に加え、「敵対する対象(大使館や批判的な企業・メディアなど)に対する音響的な心理的圧迫」にあります。聴覚を刺激して日常空間を一時的に支配することで、相手に精神的ストレスを与える戦術として長年用いられてきました。