比叡山で二度の千日回峰行を成し遂げた伝説の僧侶・酒井雄哉大阿闍梨は、生前の講話や著述において、極限状態における肉体の変化を淡々と語り残している。行の最中、胃腸に負担をかけない食事を徹底することで、内臓の感覚が研ぎ澄まされ、いつどのタイミングで排泄が起きるかを完全に予知できたという。酒井大阿闍梨の境地では、肉体の生理現象すらも祈りのリズムと同調していた。
一方、奈良の吉野・金峯山寺で大峯千日回峰行を満行した塩沼亮潤大阿闍梨もまた、過酷を極める身体コントロールの真実を明かしている。一日四十八キロ、高低差千三百メートルの険しい大峯山を往復する日々の中で、水分補給と発汗のバランスを秒単位で管理しなければ、脱水症状や激しい胃痙攣に見舞われる。塩沼大阿闍梨は、行中の激痛や高熱に耐えながら、山中での生理現象をどのように律し、自然と一体化させていったかを克明に振り返っている。