松村謙三会長はなぜ巨額広告費を投じた?ハズキルーペの真相と現在

松村謙三会長はなぜ巨額広告費を投じた?ハズキルーペの真相と現在

松村謙三会長はなぜ巨額広告費を投じた?ハズキルーペの真相と現在についての真相をご紹介します。

ハズキルーペを語る上で避けて通れないのが、誰もが耳を疑った年間100億円超という桁違いの広告宣伝費です。東証プライム市場のメガ企業ですら躊躇する巨費を、単一の拡大鏡ブランドへなぜ一挙に集中投下したのか。そこには松村氏独自の極めて合理的な経営美学と勝算がありました。

当時のインタビューや関係者の証言によると、松村氏は社内や広告代理店に対し、次のような趣旨の持論を明確に述べていました。

「中途半端に10億円や20億円の広告を打っても、消費者の記憶には残らずドブに金を捨てるだけだ。100億円を投じて一気に社会現象化させれば、競合は二度と追随できず、市場そのものを独占できる」

この電撃戦の狙いは、単にお茶の間の話題をさらうことだけではありませんでした。真のターゲットは、全国のドラッグストア、眼鏡店、百貨店、書店などの「流通バイヤー」です。圧倒的なCM投下によって店頭に高齢者が押し寄せる状況を意図的に作り出し、通常であれば何年もかかる全国5万店以上の取扱店網を、わずか数か月で一気に開拓。流通を押さえることで、他社が模倣品を出しても店頭に並ぶ余地を完全に奪うという、極めて冷徹かつ破壊的な流通支配戦略だったのです。

そして、あの語り草となったクリエイティブもまた、広告代理店主導ではなく松村会長本人の完全トップダウンで制作されました。「世の中の文字は小さすぎて、読めない!」という渡辺謙のセリフ、高級クラブを思わせるセット、菊川怜や武井咲がお尻で製品を踏み、耐久性をアピールしながら「キャッ!」と声を上げる構成に至るまで、松村氏自らが絵コンテを書き、現場でミリ単位の指示を出したと報じられています。

当初、あまりの演出の過激さに代理店や周囲は難色を示したとされますが、松村氏は「綺麗でお洒落なCMなど誰も見ない。ツッコミどころがあり、翌朝のワイドショーやSNSで誰もが話題にしたくなる違和感こそが広告のレバレッジだ」と意に介しませんでした。結果として、CM好感度ランキングで異例の首位を獲得し、パロディが社会全体に広がるなど、投じた100億円以上の広告効果を叩き出したのです。

佐々木 一輝
著者

佐々木 一輝

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。