このスラングは単なる言語ツールにとどまらず、ポップカルチャーや現代音楽の領域でも象徴的なアイコンとして使われてきました。その代表例が、カナダ・トロント出身のオルタナティヴ・ロックバンド「Dilly Dally(ディリー・ダリー)」です。
ヴォーカル兼ギタリストのケイティ・モンクス(Katie Monks)らによって2009年に結成された同バンドは、90年代グランジの生々しいエネルギーを継承した鋭角的なサウンドで国際的な評価を獲得しました。彼女たちがバンド名にあえて「Dilly Dally」という怠惰や時間浪費を連想させるスラングを選んだ背景には、「過剰な生産性主義への抵抗」や「迷走や逡巡の肯定」という強いアティテュードが込められていました。
2010年代半ば以降、社会全体が効率化やスピードを過度に称賛する中で、あえて「ぐずぐずすること」を名乗り、自らの衝動と葛藤を爆音で鳴らした彼女たちのスタンスは、言葉本来の持つ「無目的の時間」というテーマに新たな批評性を付与した好例といえます。