誰にも打ち明けられないデリケートゾーンの悩みの中で、圧倒的に多いのが「におい」と「かゆみ」、そして「正体不明のムズムズ感」です。下着に熱がこもる夏場だけでなく、厚着やストッキングで蒸れやすい冬場も含め、一年を通じて多くの女性が不快感に苛まれています。「自分は不潔なのではないか」と思い詰め、1日に何度も入浴して強い石鹸で洗ってしまう人がいますが、これこそが最初の致命的な誤認です。
健康な女性の膣内は、善玉菌の代表格であるデーデルライン桿菌(乳酸桿菌)によってpH3.8〜4.5という強い弱酸性に保たれています。この自浄作用によって、大腸菌やブドウ球菌、真菌(カビ)などの病原菌の侵入・増殖を強力にブロックしています。ところが、ストレス、睡眠不足、ホルモンバランスの変動、あるいは誤った洗浄によってこの乳酸桿菌が減少すると、膣内環境は中性からアルカリ性へと傾きます。その結果として悪玉菌が爆発的に増殖し、特有の悪臭やかゆみ、違和感として表面化するのです。
放置が危険とされる最大の理由は、初期の違和感を放置することで生じる「上行性感染(じょうこうせいかんせん)」のリスクにあります。単なる外陰部の炎症だと軽く考えていたものが、膣から子宮頸管、子宮内膜、さらには卵管や骨盤腹膜へと細菌が這い上がり、骨盤腹膜炎や将来の不妊症、子宮外妊娠の引き金となるケースが産婦人科の臨床現場から報告されています。特におりものの色や粘度が変わり、魚が腐ったような生臭い魚介臭や強い刺激臭を放っている場合、それは身体が発している極めて緊急度の高い危険信号です。