全盲のハンディキャップを克服し、魂を揺さぶる交響曲を書き上げる「現代のベートーヴェン」。そんな劇的なストーリーとともに、彼の作品『交響曲第1号 HIROSHIMA』はクラシックCDとしては異例の10万枚を超える大ヒットを記録した。難解な表現が敬遠されがちな現代音楽の分野において、これほどの商業的成功を収めた例は極めて珍しい。
だが、その神話は突如として崩壊する。実際にすべての楽曲を作曲していたのは、大学講師を務めていた音楽家の新垣隆氏であると告発されたからだ。さらに、日本放送協会 (NHK) をはじめとする主要メディアが作り上げた「感動の物語」が、綿密なリサーチを欠いた演出に依存していたことも発覚。過度な美談の捏造と消費のサイクルが露呈し、世間の怒りは一気に頂点へと達した。