こうしたタクシー独自のサブカルチャーや密室劇は、映画やテレビドラマなどのエンターテインメント作品にも強い影響を与えてきた。名優ロバート・デ・ニーロが孤独な夜間ドライバーを熱演した金字塔的映画『タクシードライバー』は、孤独と都市の暗部を見つめる乗務員の視線を見事に描き出した。夜のストリートで交わされる視線や暗号めいた空気感は、世界中の観客を魅了し続けている。
また、ジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』では、世界5つの都市を舞台に、車内という究極の密室で繰り広げられる人間模様がエスプリたっぷりに描かれた。日本国内に目を向けても、映画監督の北野武が描く作品群に漂う裏社会と隣り合わせのリアルな街の情景や、NHKのドキュメンタリー番組、Netflixで配信されるドキュメントドラマなどで、タクシー運転手が目撃する都市の素顔がたびたび特集されている。深夜の街を走るイエローキャブや黒塗り車両は、いつの時代も物語の宝庫なのだ。