世間一般には「井上陽水の妻といえば石川セリ」というイメージが定着していますが、戸籍上の婚姻歴を遡ると、実は一度の離婚歴を経た再婚であることが分かります。まだフォーク界の寵児として熱狂的な支持を集め始めていた1974年、陽水は熊本県出身の一般女性と最初の結婚に踏み切りました。
当時の陽水は、1973年末にリリースした歴史的名盤『氷の世界』が日本レコード史上初となるミリオンセラー(LPチャート1位を連続獲得)を記録し、時代の寵児へと駆け上がった直後でした。環境の激変と凄まじいプレッシャーの渦中にあった時期です。しかし、この最初の結婚生活は長くは続きませんでした。わずか約2年後の1976年に離婚が成立しています。
離婚の背景について、当時の音楽関係者の証言や報道各社の取材資料によると、急激な大ブレイクに伴う多忙極まるスケジュール、プライベートの喪失、そしてアーティストとしての重圧による「生活リズムのすれ違い」が決定打になったとされています。陽水自身、後年のロングインタビューで当時の狂騒を振り返り、「自分がどこに向かっているのか見失いそうなほどの激流の中にいた」と吐露していました。若き日の挫折と生活の破綻は、その後の彼の人生観や「家庭という枠組みに対する独自の距離感」を決定づける大きな契機になったと分析できます。