首長と地方議会は一体なぜ激突するのか。その決定的な引き金は、「民意の正統性のダブルスタンダード」にあります。首長は「私は全市民・全県民の直接投票でトップ当選した」という自負を持ち、議員側は「我々こそが多様な地区や世代の民意を集約した代理人である」と主張します。どちらも住民から直接選任されているため、双方が自らの正当性を信じて疑わず、妥協の余地が消え去るのです。
この正統性の衝突に拍車をかけるのが、地方自治法上の首長権限の圧倒的な強大さです。自治体における予算案の調製・提出権は、原則として首長専権事項であり、議会には予算の減額権や一定の増額修正権こそあれど、独自にゼロから予算を編成する権限はありません。職員の人事権や行政組織の指揮監督権もすべて首長が一手に握っています。
一方、議会側の最大の対抗手段は「議会の不信任決議」です。地方自治法第178条に基づき、議員数の3分の2以上が出席し、4分の3以上の賛成があれば首長の不信任が成立します。これに対し、首長は対抗手段として10日以内に議会を解散することが可能です。解散後の議会選挙でもなお不信任が可決されれば首長は失職しますが、この「解散か失職か」というチキンレースは、現場の政治家たちにとって文字通りの死闘となります。
選挙公約を掲げて当選した改革派首長が、従来の地元利権や慣行を守ろうとする保守系会派と衝突する事例は全国で頻発しています。首長がSNSを駆使して議会の閉鎖性を直接市民に訴えかける一方、議会側は「議会軽視」「独善的な手法」と激しく反発し、両者の感情的対立が修復不能な亀裂へと発展していくのが典型的な構図です。