「薬を先に塗ると化粧水が弾かれる気がする」「保湿を万全にしてから薬を重ねないと乾燥が怖い」。都内のクリニックで日々患者と向き合う皮膚科専門医は、診察室で交わされるこうした声に苦笑いを浮かべる。実は、多くの人が陥っている最大の落とし穴こそが、この「自己流の塗布順序」なのだ。
最新の皮膚科学が解き明かした浸透ルートの法則は極めて明快である。皮膚の角層は、水分のあとに油分を重ねることで安定したバリア機能を形成する。しかし、油分の強い保湿クリームやオイルを薬より先に塗ってしまうと、皮膜が強固な壁となり、せっかくの薬効成分が病変部に届かなくなってしまう。一方で、洗顔直後の無防備な肌に刺激の強い薬を直塗りすれば、劇烈な副作用に見舞われることもある。この絶妙なバランスこそが、治療を成功へと導く鍵となる。