かつやのビジネスモデルは、行動経済学や心理学の観点からも極めて巧妙に設計されています。客離れが囁かれながらも業績を伸ばし続ける背景には、顧客の無意識を刺激する2つの心理的メカニズムが作用しています。
一つ目は「保有効果」と「アンカー効果」を巧みに組み合わせたかつや100円割引券の存在です。人間は自分が一度手に入れた権利や利益を手放すことに強い心理的抵抗を覚えます。会計時に「次回使える100円券」を手渡されると、財布の中で明確な物理的存在感を放ち、「期限内に使わないと損をする」というサンクコスト(埋没費用)の心理が働きます。仮に本体価格が値上がりしても、他店より実質100円安く買えるという比較基準(アンカー)が頭に刷り込まれているため、再来店率の急落を防ぐ防波堤として機能し続けています。
二つ目は、男性ソロ客を中心とするターゲット層に対する「心理的サンクチュアリ(聖域)」の確立です。女性客やファミリー層を意識して小洒落た内装やライトなメニューへ過度に日和るチェーンが多い中、かつやは一貫して「男が一人で無心に肉と米をかきこむ空間」を守り抜いています。過剰なデカ盛り限定メニューも、ネット上の冷笑とは裏腹に、来店動機を生み出すエンターテインメントとしてコア層の胃袋を掴んで離しません。
【プロの結論】かつやと松のや、どちらを選ぶべきかの判断基準
激動するとんかつチェーン市場において、利用者はどのような基準で店舗を選ぶべきでしょうか。取材と現場データから導き出した判断基準を提示します。
【かつやを選ぶべき人】
・肉の厚み、衣のザクザク感、カツ丼のタレの濃厚さを最優先したい人
・卓上の「割干し大根」を愛し、具だくさんの豚汁とともにガッツリ食べたい人
・定期的に通い、紙の100円割引券を無理なく使い回せるライフスタイルの人
・車移動がメインで、ゆったりしたロードサイド店舗を利用したい人
【松のやを選ぶべき人】
・1円でも安くロースかつ定食を食べ、ご飯や味噌汁をおかわりして満腹になりたい人
・紙のクーポン管理が面倒で、スマホアプリやQRコード決済でスマートに済ませたい人
・駅前の立地を日常的に使い、朝食メニューなど手軽な選択肢を求める人
・人目を気にせずセルフサービス形式で静かに食事を完結させたい人