キックバイク選びにおいて最も激しい議論が交わされるのが、「2歳児にブレーキは必要か」という論争です。一部のメーカーや量販店は「自転車への移行がスムーズになる」「ブレーキ付きの方が安全」と謳いますが、生体力学的な観点から見ると、ここには大きな誤解が潜んでいます。
2歳児の平均握力は約2kg〜3kg未満しかありません。また、手の平のサイズも小さく、ハンドルグリップを握った状態から人差し指と中指を伸ばしてレバーに指をかけ、十分な制動力を発揮する握力を込めることは、運動発達学的に極めて困難です。小児科医および交通安全の専門家は「2歳児が緊急時に手元のレバーで止まることは期待できず、本能的に両足を地面に擦り付けて止まるのが唯一の制動手段」と指摘しています。形だけのブレーキ装置は車体重量を約500g〜800g増加させる要因にもなり、かえって2歳児の取り回しを悪化させる弊害すら生じます。
さらに見落とされがちなのが、公道走行の完全禁止という法的ルールです。道路交通法上、キックバイクは「小児用の車」あるいは「遊具」に分類され、自動車や一般交通が頻繁に行き交う道路での使用は禁止されています。消費者庁や国民生活センターには、坂道での暴走による車道飛び出し事故や、自動車との接触事故が毎年報告されています。
「公園に行くまでの歩道なら良いだろう」という油断が命取りになります。利用者の安全確保において、SG基準やCE基準(EN71)を満たした幼児専用ヘルメットの常時着用と、坂道のない平坦な専用広場での利用徹底は妥協できない最低限の防護策です。