土俵を揺らした「遅咲きの技術派」が今明かす育成の眼差し――令和の大相撲に宿る泥臭さと愛嬌

土俵を揺らした「遅咲きの技術派」が今明かす育成の眼差し――令和の大相撲に宿る泥臭さと愛嬌

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2021年の初場所、両国国技館の空気はどこか特別な熱を帯びていた。再入幕を果たしたベテランが、土俵上で見せる粘り腰。前傾姿勢から繰り出される相手の激しい突き押しを、柔らかい体で受け止める。いなし、叩き、すくい投げ。電光石火の早業ではなく、じわりと相手の体力を削り取るような展開だ。連勝街道を突き進む姿に、館内はどよめいた。

当時、すでに30代半ば。若手が台頭する現代相撲において、この年齢での幕内快進撃は異例と言ってよかった。怪我との戦い、十両と幕下の往復。過酷な下積み時代を耐え抜いたからこそ得た技術の深みだ。派手な立ち合いで勝負を決めるのではない。泥臭く喰らいつき、土俵際で残す。あの場所で見せた勝ち星の重みは、観客の胸を深く打った。

橋本 菜々子
著者

橋本 菜々子

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。