インターネット上の掲示板やSNSでは、主題歌や劇伴についていくつかの誤解や都市伝説が語られることがあります。その最たるものが「さだまさしが作詞を締め切りに間に合わせられず、即興のハミングでお茶を濁した」という俗説です。
しかし、これは明確な誤解です。前述の通り、歌詞を排したのは脚本家・倉本聰の確固たるディレクションによるものであり、「雄大な自然と人間の生を言葉で定義しない」という計算し尽くされた演出意図でした。実際、さだまさしは倉本のオーダーを受けてから極限の集中状態でメロディを構築しており、録音現場ではオーケストレーションを含め緻密なアレンジが施されています。
また、「螢のテーマ」をはじめとするサウンドトラックの名曲群についても、単なる劇伴作家ではなく、フォーク界屈指のメロディメーカーであるさだまさしが手掛けたからこそ、歌がなくとも歌心が溢れ出るような親しみやすさと哀愁が同居しています。言葉を削ることで生じる静寂すらも音楽の一部として計算されていたことこそが、『北の国から』の劇伴が映画音楽並みの芸術的評価を受ける真の理由です。