『金色夜叉』熱海の悲劇と裏切りの真相|未完の結末と現代への警告

『金色夜叉』熱海の悲劇と裏切りの真相|未完の結末と現代への警告

『金色夜叉』熱海の悲劇と裏切りの真相|未完の結末と現代への警告の見逃せないポイントをわかりやすく整理しました。

本作にまつわる最大の疑問の一つが、「結局、物語の結末はどうなったのか」という点です。尾崎紅葉自身の筆による『金色夜叉』は、貫一が高利貸しとして金を貸した相手の無理心中や火災などの悲劇に巻き込まれ、精神的な転機を迎える場面の途中で途絶えています。

執筆当時、紅葉は進行した胃がんに冒されており、激痛に耐えながら病床で筆を握っていました。報道や文壇の記録によると、紅葉は「貫一とお宮を最後には精神的に救済したい」という構想を弟子たちに語っていたとされていますが、1903年10月30日、35歳の若さで帰らぬ人となりました。

この未完の傑作を補完したのが、硯友社で紅葉の愛弟子であった小栗風葉(おぐり ふうよう)です。風葉は師が遺した創作メモや口伝をもとに『続金色夜叉』『新続金色夜叉』を執筆しました。その続編における結末では、以下のような展開が描かれます。

富山との婚姻関係を破綻させ、実家からも孤立したお宮は、貫一への謝罪と愛を貫くために尼寺へ入り、過酷な信仰生活で身を清めようとします。一方の貫一も、多くの人々の破滅を目の当たりにする中で高利貸し稼業から手を引き、得た富を社会事業や慈善のために投げ出す決意を固めます。劇的な復縁という甘い結末ではなく、互いの罪と傷を抱えたまま、魂の次元で赦し合い和解するという、重厚な幕引きが用意されました。

中川 明日香
著者

中川 明日香

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。