花札の1月(松)や2月(梅)の絵柄に描かれている赤い短冊。そこにしたためられた流麗な文字を素直に追うと、どうしても「あ・の・よ・ろ・し」と読んでしまいがちです。しかし、正しくは「あかよろし」と読みます。
2文字目の「の」に見えている字は、助詞の「の」ではありません。かつて日本語で広く使われていた「変体仮名(へんたいがな)」と呼ばれる文字の崩し字で、漢字の「可」を草書体で崩した「か」なのです。
よく見ると「の」の右肩や中央部分に小さな点や筆の跳ねが見受けられます。これは濁点ではなく、「可」という漢字の筆跡の名残りです。多くの人が「あのよろし」だと思い込んできたフレーズは、文字の歴史がもたらした壮大な錯覚といえます。