従来のラブコメディにおけるヒロインといえば、純粋で健気、どこか不器用な女性像が王道だった。しかし、本作で描かれた吉岡サエコ(高橋サエコ)は、その既成概念を鮮やかに打ち砕いてみせた。自分の魅力を過不足なく把握し、計算し尽くされた仕草と甘い微笑みで男心を翻弄する——まさに「あざと可愛さ」の原点にして極致である。
恋愛ドラマの歴史を振り返っても、サエコほど視聴者の好悪を二分しながらも強烈に惹きつけたキャラクターは珍しい。計算高さの裏に見え隠れする孤独や、現実的な生存戦略としての愛嬌。石原さとみは、単なる小悪魔にとどまらない複雑な人間性を巧みな表情筋の動きと緩急あるセリフ回しで演じきり、作品に比類なき奥行きを与えた。