家族社会学の観点から見ると、日本の家族文化には「身内なのだからどこまでも痛みを分かち合うべきだ」「親(あるいは配偶者)の責任として耐え忍ぶべきだ」という情緒的同化の圧力が強く根付いています。しかし、パーソナリティ障害の治療において、この同化傾向は事態を膠着させる最大の阻害要因となります。
真の支援とは、相手の課題を肩代わりすることではありません。アドラー心理学で言う「課題の分離」を徹底し、「本人の感情の責任は、本人にしか取れない」という現実を受け入れることからすべてが始まります。
現在、関係の継続に苦悩している読者に向けて、臨床の現実を踏まえた客観的な判断基準を提示します。
【支援を継続して関係再構築を目指せる条件】
・本人が自身の感情調節の偏りを自覚し、専門医療(精神科・心理療法)に通院する意思がある
・支援側が「自分の生活・仕事・睡眠」を犠牲にしない境界線を死守できている
・家族以外の第三者(医師、カウンセラー、公的機関)がチームとして介入している
【一時的に物理的・法的な距離を置くべき(別居・別れを検討すべき)条件】
・包丁を持ち出す、殴打するなどの身体的暴力が一度でも発生している
・支援側の心身が限界を迎え、重度のうつ症状や希死念慮が現れている
・本人が医療へのアクセスを頑なに拒否し、周囲への要求や脅迫のみを繰り返している
「距離を置くこと=見捨てること」ではありません。物理的に離れることは、本人が「他者に依存して感情を鎮める」という不適応なパターンを断ち切り、自らの力で治療に向き合うための決定的な転換点(底つき体験)になることも多いのです。