古来、人々は春の気怠さや心地よい眠気にさまざまな名前を与えてきました。「春眠暁を覚えず」以外にも、季節の移ろいと眠りを結びつけた表現は豊富に存在します。
俳句の世界では「春眠(しゅんみん)」そのものが三春の季語として定着しており、類語として「春の眠り」「春眠し(しゅんみんし)」などがあります。また、日中のぽかぽかした陽気で船を漕ぐ様子を表す「春昼(しゅんちゅう)」「春愁(しゅんしゅう)」といった言葉も、春特有のアンニュイな気だるさを端的に捉えています。
ことわざや慣用句の世界を見渡しても、海外には似たような表現が存在します。ドイツ語には「Frühjahrsmüdigkeit(春の疲労)」という春特有の倦怠感を表す専門の単語があり、医学用語としても認知されています。洋の東西を問わず、寒さから解放された肉体が環境の変化に適応しようとする際、眠気や脱力感に襲われるのは人類共通の普遍的な現象と言えます。