隔離を行う際、最初に行うべき実践作業が産卵床からの卵の取り方です。メダカの卵には「付着糸(ふちゃくし)」と呼ばれる細い毛のような繊維が無数についており、これによって水草や毛糸製の産卵床に強く絡みついています。この付着糸を残したまま卵同士が塊になった状態で放置すると、通気性が悪くなり、1つの卵に発生したカビが一夜にして全体へ燃え広がるように伝染してしまいます。
作業手順としては、産卵床を一度水から引き上げ、清潔な指先で卵をつまみ取るように外します。「指でつまんだら潰れてしまうのでは」と躊躇する初心者も少なくありませんが、健康な卵は非常に硬い殻(受精膜)に守られており、親指と人差し指の腹で軽く転がす程度ではビクともしません。むしろ、指先で優しくコロコロと転がして付着糸を擦り切る作業こそが、後のカビ防止に決定的な役割を果たします。
このクリーニング作業は、有精卵と無精卵の見分け方を実践する絶好の選別プロセスを兼ねています。指で触れた際に少しの力でプチッと簡単に潰れてしまうものは、受精していない無精卵か、途中で発生が止まった死卵です。有精卵と無精卵には以下のような明確な差異が存在します。
- 有精卵の特徴:指で押しても弾力があり潰れない。透き通った琥珀色や透明感を持ち、数日経過すると内部に黒い2つの点(赤ちゃんの目)がはっきりと確認できる。
- 無精卵の特徴:指の腹で触るだけで簡単に潰れる。全体が白く濁っており、産卵から24〜48時間以内に表面に白いモヤモヤとしたミズカビ菌(サプロレグニア)が発生する。
白く濁った無精卵を「可哀想だから」と有精卵と一緒に水容器へ残しておく行為は厳禁です。無精卵はミズカビ菌の格好の温床となり、隣接する生きている有精卵まで窒息死させてしまいます。指で軽く押して硬さを確かめ、柔らかいものや白濁したものはその場で完全に取り除くことが鉄則です。