警察庁が公表する少年保護事件や性犯罪関連の統計データを見ても、被疑者の供述で圧倒的に多いのが「相手も嫌がっていなかった」「合意の上だった」という弁解です。にもかかわらず、同意があっても犯罪になる理由は、法律が守ろうとしている法益の所在にあります。
刑法における性犯罪が「個人の性的自己決定権」を守るための規定であるのに対し、青少年健全育成条例が保護するのは「心身の発育途上にある未成年の健全な育成環境そのもの」です。18歳未満の青少年は、社会経験や精神的な成熟度の観点から、性行動がもたらす肉体的・精神的・社会的な結果を十全に予測・判断する能力が未成熟であると法律上みなされています。そのため、大人が未成年者の判断力不足に乗じたり、甘言を弄して性的な関係を結んだりすること自体が悪質とみなされ、青少年の「見かけ上の同意」は違法性を打ち消す根拠になり得ない構造が作られています。
ここで押さえておくべきなのが、淫行条例の対象年齢です。全都道府県の条例において、保護対象はおおむね「18歳未満(満18歳に達するまでの者)」と規定されています。たとえ高校を卒業していても18歳未満であれば対象となり、相手が「早く大人になりたい」「自分から誘った」と警察に証言したとしても、大人の側が処罰を免れることはできません。
さらに、行為の背景に金銭や物品の供与、宿泊場所の提供といった対価が存在した場合は、条例違反にとどまらず児童買春児童ポルノ禁止法(児童買春罪)が適用されます。こちらは条例よりもはるかに法定刑が重く、5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されることとなり、合意の有無を論じる余地は完全に消滅します。