IQOSを愛用する多くの喫煙者が直面する最大の疑問は、「なぜ箱にニコチンやタールの量が書かれていないのか」という点にあります。結論から言えば、これはメーカー側の隠蔽ではなく、現行の法制度(たばこ事業法)と測定規格の構造的限界に起因しています。
日本国内で紙巻きタバコのパッケージに印刷されているタール・ニコチン値は、国際標準化機構(ISO)が定めた機械喫煙測定法に基づいています。この方式は「燃焼するタバコ」を一定の間隔と流量で吸引し、フィルターに付着した粒子状物質から水分とニコチンを差し引いてタールを算出する仕組みです。しかし、IQOSをはじめとする加熱式タバコは「葉を燃やさず加熱してエアロゾル(蒸気)を発生させる」技術を採用しています。発生する蒸気の大部分は水分とグリセリンであり、従来のISO測定器を通すと水分凝縮によって正確な分離測定ができません。
開発元であるフィリップモリス インターナショナル(PMI)は、「統一された公的測定規格が存在しない段階で独自の数値を表示することは、かえって消費者に誤解や優良誤認を与える」という立場をとっています。これが、フィリップモリスが成分数値を非表示としている制度上の理由です。厚生労働省や国立がん研究センターなどの公的研究機関も、加熱式タバコ専用の新たな標準測定法(HCI法など)の確立を模索しているものの、2026年時点においてもパッケージへの一律義務化には至っていません。