運ばれてきた器を見て、誰もが息をのむ。表面を覆い尽くすのは、みずみずしい青ネギの圧倒的な緑。メニューを極限まで絞り込み、看板である「牛肉のフォー(Phở Bò)」一本に魂を注ぎ込むスタイルこそが、この店の矜持だ。
一般的なベトナム料理・エスニック料理のフォーは、牛や鶏の澄んだスープに茹でた肉を載せるスタイルが多い。しかし、ティン氏直伝の製法は根本から異なる。新鮮な牛肉をニンニクとともに強火の炎で一気に炒め、牛骨をじっくり煮出した白湯スープと合わせる。香ばしさと脂の甘み、そこに米麺のしなやかなコシが絡み合い、口内を満たす重厚なコクを生み出している。