大泉洋のねずみ男が伝説となった要因は、外見の再現度だけに留まらない。原作におけるねずみ男の本質である「強欲でずる賢い小悪党でありながら、どこか憎めない愛嬌」を、身体表現と巧みなセリフ回しで見事に体現した点にある。
自分の保身のためなら平気で仲間を裏切り、強い妖怪に媚びへつらう一方で、窮地に陥るとコミカルに泣きつく。一歩間違えれば観客に強い嫌悪感を与えかねない難役だが、大泉洋が持つ天性のユーモアと親しみやすさが絶妙なクッションとなり、劇中で最も人間味あふれる魅力的なキャラクターへと昇華させた。
アドリブを交えたテンポの良い掛け合いや、軽妙なステップで逃げ回るコミカルな身のこなしは、舞台で培われた確かな演技力があってこそだ。単なるモノマネに終わらず、キャラクターの内面にある弱さやズルさをエンターテインメントとして成立させたことが、今なお「ハマり役」として名前が挙がり続ける最大の理由である。