球場全体が地鳴りのような歓声に包まれた9回裏2死満塁。スコアボードに刻まれた同点の均衡を破ったのは、打席に立った主砲の迷いのないフルスイングでした。相手クローザーがカウント2-2から投じた勝負球は、内角低めを狙った154km/hの高速フォーク。しかし、捕手のミットが構えられたコースからボール半個分真ん中へ浮いた瞬間、鋭い打球音が夜空に響き渡り、白球は左中間フェンスを直撃しました。
この劇的サヨナラ理由を単なる「失投」の一言で片付けることはできません。打席前のネクストバッターズサークルでの観察、そして前打席で外角スライダーに泳がされていた伏線を逆手に取った「球種を一点に絞り込む割り切り」が勝敗を分けました。試合後のヒーローインタビューで、劇的打を放った本人は興奮冷めやらぬ面持ちで次のように胸中を吐露しています。
「前の打席で完全に外の球で仕留められていたので、ベンチ裏で相手の過去のウイニングショットの配分をアナリストと再確認しました。追い込まれても落ちる球の軌道だけに目線を固定していた。チーム全員が繋いでくれたチャンスだったので、打った瞬間は頭が真っ白になりました」
一方、痛恨のサヨナラ負けを喫した相手陣営の監督は、囲み取材の場で硬い表情を崩さず、「カウント有利から勝負を焦ったバッテリーの呼吸、そして申告敬遠で満塁策を取ったベンチの決断も含め、すべて指揮官である私の責任」と語り、継投の遅れと勝負どころでの守備体系の判断に課題が残ったことを示唆しました。